自動車保険において、対人賠償、対物賠償とならんで、つけておくべき補償の一つに、人身傷害補償があります。
対人賠償や対物賠償は、文字からなんとなく、人への賠償や物への賠償ということがわかりますが、人身傷害補償ってなんなのでしょう?どういう時に、どういうものが補償されるのでしょう?
人身傷害補償で支払いの対象になるもの
人身傷害補償で支払いの対象になる費用は実に様々です。え、そんなものも支払い対象になるの!?と思うような意外な費用も対象になる場合がありますので、よく覚えておいてくださいね。
人身傷害補償は、自動車事故があった際に、乗っていた人のケガにまつわる支払いを補償するものです。具体的には治療費の実費と、後遺障害が残った場合は後遺障害の程度によって保険金を支払います。
その他、治療にかかった日数等に対する精神的損害(自賠責法で定める慰謝料に似ているもの)、病院までの交通費、仕事を休んだ場合は休業損害などが補償されます。学生などはもともと働いていないので休業損害は出ませんが、仕事をしていない主婦の場合でも、家事ができないと医師が認めた場合には休業損害が出ます。
自動車同士の事故の場合、どちらがどれだけ責任があるかという過失割合が決められます。
例えば6対4でこちらが6割悪いという過失を取られた場合、相手に対して自分のケガにかかった費用の4割を請求できますが、逆にいえば6割を自己負担で支払わなければならないし、相手のケガに対しては6割を支払わなければならないということになります。
この時、対人賠償で相手に支払ったり、支払ってもらったりします。
任意保険が支えるのは、自賠の補償を超えた時
ここでご注意頂きたいのが、自賠責保険の存在です。自賠責保険とは、公道を走る自動車やバイクなどが入ることを義務付けられている保険です。自賠責保険は被害者保護を目的としていて、自動車の事故で亡くなったり後遺障害が残ったりケガをした被害者が、金銭に困ることのないように、国が定めた強制保険です。
自賠責保険は、死亡した場合は3千万円、後遺障害が残った場合は4千万円、ケガをした場合は120万円を限度に、損害に対して支払われる保険です。
自動車による死傷事故があった場合、まずはこの自賠責保険が使われます。自賠責保険は自分のケガに対しては使うことができないため、自動車事故の場合はお互いにお互いの自賠責保険を使うことになります。この場合は過失割合に関係なく、自賠責の保険金の上限までは支払うことができます。ですが、被害者に重大な過失があった場合、自賠責の保険金が減額されることがあります。
そして自賠責保険の上限を超えてなお支払い義務が生じた場合に、初めて任意保険が効力を発揮します。つまり、任意保険に入っていても自賠責に入っていないと、自賠責で支払える範囲の金額は補償対象外になるということです。
任意保険の対人賠償が無制限だからといって安心してはいけません。死傷した際の支払いはすべて自賠責保険が先ですので、自賠責保険に入っていないと自己負担が発生してしまうのです。ですので、自賠責保険は切らすことのないよう、必ず入っておいてくださいね。
人身傷害補償の範囲
人身傷害補償を使えるのは、契約の車に主に乗ると決められている人(記名被保険者)の同居の家族のほかに、契約の自動車に同乗している人が対象になります。契約の自動車に乗っている時に死傷した場合はもちろんのこと、他の人の車に乗っていて死傷した場合や、自動車に乗っていない時に、自動車にまつわる事故で死傷した場合にも使えます。
例えば歩行中に自動車にはねられたとか、自転車に乗っている時に自動車に接触して転んだとかそういう場合の事故です。
ただし、人身傷害補償が契約の自動車に搭乗中の場合しか使えないようになっていると、契約の自動車に乗っている時のケガしか補償されませんのでご注意ください。
人身傷害補償の金額
相手がいる場合は過失割合によって相手が治療費を負担してくれますので、停車中に追突されてしまった事故等、過失がない時は全く支払う必要がありませんが、こちらにも過失がある場合は、治療費の自己負担が出てきます。また、100%相手が悪い事故でも、相手に支払い能力がなかったり、逃げてしまったりした場合、自分の保険を使うことになります。
人身傷害補償は自賠責保険で支払える金額を超えた時に使えるといいましたが、働き盛りのサラリーマンの方が死亡してしまった場合、自賠責保険の3000万円では到底足りるものではありません。その人が生きていたら、将来的にいくら稼ぐことができたかということを逸失利益(いっしつりえき)と言います。
そしてその人の収入の他、年齢、家族構成を考えて支払われる保険金が決まります。35歳の方が死亡された場合、扶養家族がいない場合であれば6千万円、いる場合は8千万円必要とされています。また、重度後遺障害の場合は各1億4千万円必要とされています。
人身傷害補償は3千万円からつけることができますが、自賠責保険から4千万円でても重度後遺障害になってしまったら7千万円までしか支払えず、到底足りないということになりますよね。補償が無制限であることが一番望ましいですが、補償を受けられる人の年齢や収入を考慮して、適切な保険金額を設定してくださいね。